宮司挨拶
土津神社は、會津藩初代藩主・保科正之公を主祭神としてお祀りし、延宝三年(1675年)、正之公のご遺命により、ここ猪苗代の地に創建されました。
正之公は、徳川家康公の御孫にして、徳川秀忠公の御子、第三代将軍家光公の異母弟であられながら、慎み深く誠実なお人柄で知られ、学問と信義を重んじ、仁政をもって会津、そして現在の東京の礎を築かれた名君であります。その御徳は時代を超えて今なお私たちの心を照らし、敬慕を集めてやみません。
当社では、正之公を主祭神としてお祀りするほか、会津藩の第三代から第九代までの藩主を相殿神として、また、第十二代〜第十六代の各天皇に仕えたという伝説上の忠臣・武内宿禰(高良玉垂大明神)を相殿客神として奉斎しております。御歴代のご神威とともに、地域と人々の暮らしを静かにお見守りいただいております。
土津神社が大切にしているのは、「人生に彩りと潤いを。」という理念です。
現代社会は、つねに速く、慌ただしく動いています。そのなかで、ふと立ち止まって空を見上げ、風の匂いに季節を感じ、誰かのやさしさに気づく——そうした“余白”が、心にゆとりをもたらし、日々の暮らしに静かな彩りを加えてくれます。
私たちは、「幸福感受性の回復」という使命のもと、当社が、ささやかな幸せを感じることのできる「心の拠り所」となれるよう、日々の神明奉仕に務めております。自然と歴史に抱かれたこの場所で、どうか皆様ご自身の内にある豊かさに気づかれる時間をお過ごしください。
皆様のご参拝を心よりお待ち申し上げますとともに、今後とも変わらぬご崇敬とご加護を賜りますよう、お願い申し上げます。
令和七年五月三日
宮司就任のご挨拶
此の度、令和六年十一月三日に帰幽いたしました父である宮澤重正宮司の後を継ぎ、令和七年二月十日付を以て神社本庁より土津神社宮司を拝命いたしました。素より浅学非才の身にて責任の重さを痛感しておりますが、この上は大神様の御加護を仰ぎ、至誠を更に尽くして御神徳の宣揚と御社頭の隆昌のために一意専心研鑽に励み、神明奉仕に精励する所存でございます。
宮澤重正先代宮司は、温和な人柄で、氏子を始めとする地域の方々に愛され支えられ、平成二十二年度から平成二十八年度まで行われた奥之院参道修復事業、平成二十三年度の保科正之公生誕四百年祭、平成二十五年度の土津神墳鎮石等の災害復旧事業、令和四年度の保科正之公没後三百五十年式年祭など幾多の事業を完遂して社頭の隆昌と環境整備を見事に整えられてこられましたご功績は真に大なるものがあります。
本年、令和七年は土津大明神が本殿に御鎮座され三百五十年を迎える節目の年であります。先代宮司の思いを継承し、御鎮座三百五十年大祭を始めとする奉祝記念事業を賑々しく執り行って参りたいと思います。
今後は、地域社会の安寧と活性化に向けて、祭祀の厳修と伝統の継承とともに、時代に応じて求められる神社の在り方を追求し、新しい文化の創造に努めて参りますので、尚一層の御指導御鞭撻を賜わりますようお願い申し上げます。
令和七年二月十日

土津神社 第三十一代宮司 宮澤重嗣